2)個別指導の現状と展望についての考察

※ ここでは「対話式学習館ホームズ」の説明を横にのけて、これまでの「個別指導塾」の問題点や現状の分析と、これからのより良い「個別指導塾」のあり方のための考察に照準を合わせてお話していきます。 ただの業界批判ではなく、信じて子どもを預けていただいている皆様の気持ちに少しでも応えられるような塾がひとつでも増えることを心から願って綴らせていただきます。

※ 学生時代からこれまでに見聞きしたこと、考えたこと、提案したいこと等、さまざまな部分で主観的な表現も多々あり、もしも不快な気持ちを起こさせてしまった場合には、本当に申し訳ありません、と先に申し上げておきます。

■ 個別指導のさまざまな形式について

個別指導という授業形態が浸透してきて、それなりに長い年月が過ぎた今、集団授業でずっと実績をあげてきた大手の塾にも個別指導部門が創設され、21世紀に入ってからの塾のスタンダードだと言われるようになってきました。ただ、ひとことで個別指導と言っても形式はさまざま。まずはそのあたりの情報の整理をしておきます。

[1] 1対1での完全個別指導

この形式でやっている塾は非常に少数であるか、授業料がかなり割高になっていると思います。熱心な先生の場合だと生徒に対して教えすぎたり、生徒の依存心が強い場合だと先生に頼りすぎたりで、問題は進むものの、自力で解く力は身につきにくい、という難しさもあります。もしも現在、1対1での授業を受けられているのでしたら、先生と生徒との距離感が適切であるかどうか、一度チェックしてみてください。

[2] 1対2での個別指導

現在の個別指導の授業形式の主流となっているのがこの形で、生徒の自立と面倒見の良さを両立させた形といえます。 この形式でも、大きく2つの授業のやり方に分かれています。

①講師主導型

先生が講義を進めていき、生徒は説明を聞きながら板書する形です。講師の多くは大学生で、ひとりひとりの講師に満足のいく研修体制を充実させられていない塾も少なくありません。一歩間違えると、集団授業よりも講師の指導力が低い上に、講師の自己満足で授業だけが進んでしまい力がつかない、なんてことも珍しい話ではなかったりします。 まずはお子様のノートをご覧になって、正常に授業が進んでいるかの確認と、演習や宿題の精度を確認してみて、お子様が本当に理解できているかチェックしてみてください。

②生徒主導型

生徒の演習を中心に授業が進んでいく形です。基本的には自学自習の進めやすい教材を用いて、学校などで既習の範囲を前から順番に進めていき、生徒自身が分からないと主張したり、答え合わせの際に間違えるまで、ただひたすらに演習が続いていく形式です。塾の日に「どれだけ問題が進んだか?」でなく、「どれだけ理解できたのか?」に注目してノートを見てみると、お子様にその形式が本当に合っているのかの判断基準になると思います。

[3] 1対3~それ以上

学年・学校・科目・生徒の学力レベルの全てが揃っていれば、効率良く授業も進めることができ、先生の目も行き届きやすい形です。しかし、上記のどれかひとつでも揃っていなければ、どこかに歪みが生じてしまいます。おしゃべりが大好きな子がいたり、周りよりも理解の速度がゆっくりだったり、誰か1人がペースを乱してしまうと、ズルズルといきやすい形とも言えます。もしも、複数名がバラバラの内容で学習を進める形だと、先生から「ちょっと待ってな」と言われている回数が多いかもしれません。点数などがなかなか上がらないようでしたら、お通いの塾へ相談してみるのもひとつかもしれません。

■ 現状をもう少し多角的に掘り下げると…?

「個別指導」といって授業を行う塾でしたら、「一人一人に合わせて」という文言が広告やホームページなど随所で目に付くと思いますが、本当にそれは実現されているのでしょうか? 自身の見解で申し上げますと、本当に実現されていて、なおかつ成績を伸ばしきる仕組みがしっかりできている個別指導塾は全国のどこにも存在していなかったように思います。

まずはその原因について分析してみます。

[1] マネージャーが教育を理解していない!?

もしかすると驚かれることかもしれませんが、多くの学習塾における個別指導担当の正社員スタッフは、教務経験を持っていない人が過半数です。教育産業以外からの異業種転職も多く、おまけに部門内の会議や研修も、教務に関する話よりも圧倒的に営業トークやクレームへの対応などに充てられる時間の方が多いのが現実です。 塾で預かることになった子ども達がどんな背景を持っていて、どんなことは得意で、どんなことは苦手で、どうしていけばその子が生き生きと学んでいくのか、そのようなビジョンがないままに営業用トークがなされている場合が多いというのが現実です。なので、子ども達が伸びるかどうかは現場の大学生講師の力量に任せざるを得ないのです。

[2] 大学生講師の裁量に全てが委ねられる!?

はじめに申し上げておきますと、大学生講師の全てが良くないというわけではありませんが、「本当に立派な講師」である人は、ごくひと握りです。 たとえば、「子ども達と同じ目線で伝えてあげたい」と言っている先生が「相手に理解しやすいように噛み砕いて伝える」という意識を持っている可能性よりも「友達感覚で楽しくお話ができる」と考えている可能性の方が圧倒的に高いですし、「先生自身は解ける」「先生自身はこうやって成功した」ということを伝えることはできますが、目の前の生徒に同じ方法が通用して、それで伸びるかというと別問題だったりします。

[3] 生徒ひとりひとりの評価は数値化されて管理される!?

個別指導塾における生徒ひとりひとりの状況や情報の把握に関しては、以下のどれかの場合が圧倒的に多いです。

① 実は普段は全然みていなくて、懇談の前にだけ担当講師から軽く情報を聞いて話をつくる。

② 「把握する仕組み」を作ってはいるが形骸化している、もしくは講師は記録するがマネージャーは見ていない。

③ 得点と5段階評価などで管理していて、良くない状態の場合のみにアンテナが張られている。

[4] 管理しきれないから「レールに乗せる」!?

個別指導塾の中で、有名で規模がどんどん大きくなっていっているところの多くは、以下のような結論を出しているように感じられます。

「マネージャーも講師も生徒も保護者も、みんなそれぞれ。だから、個々に合わせるのは不可能だ。」

だから合わせるのではなく、「合わせさせる仕組みのレール」に乗せれば良い。

この方法にしたがえば(定期テストの)点数は伸びる。

どんなマネージャーでも運営が(表面上)できる。

どんな講師であっても(それなりに)授業が成立する。

 

…子ども達を伸ばしきることのできる可能性がいちばん高い、個別指導という教育形態において、上記のような妥協の産物が、世の中のスタンダードとなろうとしていることが、本当に悔しくてたまらない、と私自身ほんとうに心の底から考え続けてきました。

だからこそ、下積みをしっかりしてから塾を自分で設立して、業界のスタンダードを提案・発信する側に立つ。

その想いの結晶として設立したのが、われわれ「対話式学習館ホームズ」です。